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◆今後の方向性を予測
今後改正される可能性の高い、相続税と贈与税。具体的にどのような改正が考えられるか、実現可能性が高いと考えられるものをご紹介します。
≪予測1≫贈与税の非課税額の引き下げ
現在、贈与税の非課税枠は110万円、これは皆さん知っているでしょう。税法ではこれを非課税ではなく「基礎控除」と呼びます。贈与税(暦年贈与)は、毎年1月1日から12月31日までに贈与した財産の合計金額から、基礎控除額を差し引いた金額に対してかかります。ですから、贈与した財産が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。
しかし税法を詳しく読むと、相続税法第21条の5に「贈与税については、課税価格から60万円を控除する。」と記載されています。本法に書かれている控除額は、実は60万円なのです。その後改正があり、租税特別措置法第70条の2の4に贈与税の基礎控除の特例として「平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については、相続税法第21条の5の規定にかかわらず、課税価格から110万円を控除する。」と記載されています。この、本法の改正ではなく特例を設けているところがミソです。
【参考】贈与税の基礎控除額の変遷
適用年度 | 基礎控除額 |
昭和28年~昭和32年 | 10万円 |
昭和33年~昭和38年 | 20万円 |
昭和39年~昭和49年 | 40万円 |
昭和50年~平成12年 | 60万円 |
平成13年~現在 | 110万円 |
ここで考えられるのが、この特例を無くしてしまうこと。贈与税ゼロで資産移転できる範囲が減りますので、結果として相続税の課税対象財産が増えることになります。
≪予測2≫相続前3年以内贈与の持ち戻し期間を拡大
相続税には、相続開始日から3年以内に贈与した資産については、相続財産に加算して計算するというルールがあります。つまり、3年前の贈与には相続税がかかり、4年前の贈与は110万円以内であれば無税ということになります。そのため、比較的短期間で相続税対策を行うことができるのが現状です。
そこでこの3年という期間を、例えば10年まで拡大するということが考えられます。そうなれば、相続財産に足し戻す財産は増えますから、短期的な相続税対策というメリットは無くなります。
【例】相続開始前10年前から、毎年110万円贈与していた場合(相続開始年X11年とする)
※単位:万円
X1年 | X2年 | X3年 | X4年 | X5年 | X6年 | X7年 | X8年 | X9年 | X10年 | 持戻額 | |
3年 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 330 |
10年 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 110 | 1,320 |
上記の場合、現状の税制ではX1~X7年までの110万円×7年=770万円が無税となりますが、もし今後の改正で10年持ち戻しとなれば、すべての贈与が相続税の対象となってしまいます。
≪予測3≫贈与税の時効を延期
現在、贈与税の時効は6年となっています。税務署が行う「決定」や「更正の請求」(間違った申告を修正したり、無申告の贈与に対して贈与税を税務署側で計算して賦課する権利)は、申告期限から6年前まで遡ることができます。逆に、6年以上前の贈与税の無申告については、追及することができません。そこで、「時効を延期する」ということが考えられるでしょう。対象期間が長くなれば、贈与税の申告漏れや納付漏れが見つかる可能性も増えます。納税者にとっては不利となりますが・・・ちなみに悪質な財産隠しがある場合は、時効が7年に延びます。
◆出口課税の注意点
親から子へ、親から孫へ、財産の移転をする際に、制度を上手く使って贈与税のかからないようにしたい。これは珍しいことではありません。ただし贈与する際に気をつけないと、過去の贈与は「贈与」ではなく「相続財産」とみなされてしまうことがあるのです。もちろんその全額が、相続税の対象になってしまいます。
【例】
①子供名義の口座へ毎年110万円贈与として預入をした。当然贈与税の申告はしていない。
⇒単に相続人が自分の財産を子供名義の口座に預入しただけ、とも考えられる。
申告をしていないので、贈与したという証拠がない。つまり、名義預金とみなされてしまう!
②専業主婦の妻の口座へ、生活費として毎月多めに預入。残額はそのまま積立。
⇒専業主婦である妻には収入がないので、妻名義の口座に多額の残高がある場合には、
実際には夫の財産であると疑われる可能性があります。つまり、名義預金とみなされてしまう!
贈与する際には、その一時のメリットだけを考えて贈与税の申告不要(贈与税額ゼロ)の範囲での贈与がベストだと考えられる方も多いのが現状だと思います。ただ、特に多額の財産(現預金だけでなく不動産なども含めて)を下の世代へ移転していくことを考えると、いずれ直面するかもしれない「相続」を視野に入れて、贈与することをお勧めします。そもそも贈与税は、相続税の課税逃れを補完する目的で出来た背景があります。今後も贈与税と相続税は一体課税として、財産の移転に対して公平に課税しようという流れは進むでしょう。納税者にとっては難しい論点にはなりますが、長い目で見て損が無い選択が取れると良いですね。
◆事例紹介
最後に、預金に関する贈与ではありませんが、受贈者と税務署の見解が異なった事例を一つ紹介いたします。(細かい状況などは省略しています)
【国税不服審判所 平9.1.29裁決(採決事例集No.53)】
≪概要≫受贈者は昭和60年3月14日に宅地の贈与契約を結び、同日付の公正証書を作成。
7年後である平成5年12月13日に登記。(登記簿に昭和60年3月贈与と記載されている)
⇒平成7年、税務署は平成5年の贈与税申告をしなかったとして、贈与税・無申告加算税の対象とした事例。
この事例で争点となったのは、その宅地の贈与日が以下のいずれの日になるのかです。
①贈与契約の締結日
②登記日
受贈者は①贈与契約の締結日が贈与日という認識で贈与税の申告をしませんでしたが、審判所は最終的に税務署の判断を認定し、②登記日が贈与日であると裁決しました。「所有権が移転した日」が贈与した日であるという判断が下されたということです。
このように、予期せぬ納税が発生してしまうケースもあります。とくに宅地などの不動産の贈与であれば、財産価値も高額になることが多く、納税額のインパクトは大きいでしょう。
解説動画もぜひご参照ください!
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