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個人で行うふるさと納税は、税額控除や返戻品のメリットが大きく、制度をご存じの方も多いと思います。平成28年度の税制改正により、「企業版ふるさと納税」が創設されました。今回は制度の概要と、会社の税金への影響について解説したいと思います。
◆ 個人版ふるさと納税のおさらい
「ふるさと“納税”」という言葉が使われていますが、実際には地方公共団体への「寄付」のことです。個人がふるさと納税(寄付)をした場合は、寄付金額のほとんど(寄付金額から2千円を控除した金額。但し上限あり。)が所得税・住民税から控除されます。任意の地域への寄付と税額控除という仕組みにより、一部ではあっても実質的に自分で納税先を選ぶことができるようになったと言えるでしょう。
◆ 法人が寄付金を支出した場合の税務上の取扱い
法人が寄付金を支出した場合は、その支出先によって、経費になるか否かの税務上の取扱いが異なります。その中で、「地方公共団体」へ寄付についてはその公共性の高さから、全額が経費として認められています。税率30%と仮定した場合、寄付をするとその分利益が減るため、「寄付金額×30%」の税負担の減少になりますが、残りの70%は単純にキャッシュアウトすることになります。
◆ 企業版ふるさと納税の仕組み
さて、それでは企業版ふるさと納税に該当する寄付への取扱いはどうなるのでしょうか?今回の新しい制度により、寄附額が全額経費になる今までの取扱いに加え、下記の地方税について税額控除が適用されることになりました。(地方税で控除できない場合は一部法人税から控除)
地方税から寄付金額の3割を控除することができるため、従来の経費計上による税負担30%の減少分と合わせて、最大で寄付金額の60%の税負担を減らすことが可能になりました。キャッシュアウトは寄付額の40%で済むわけです。ただし、税額控除の上限があるため、利益が少なく税金も少ない年などは、最大額の税額控除が受けられない可能性もあります。そこで、地方税で控除しきれなかった部分は、法人税で控除OKということになっているわけです。下記のイメージですね。
◆ 地方公共団体への寄付ならすべてこの制度の対象になるの?
企業版ふるさと納税は、地方創生の推進を目的とした政策のため、地方公共団体が国の認定を受けて行う地方創生事業に対して寄付を行った場合にのみ適用されます。個人版ふるさと納税のように、寄付先にどの自治体を選んでもいいというものではありません。そのため、この制度の適用を受けたい場合は、国の認定を受けた事業かどうかを事前に確認する必要があるでしょう。また、寄附をする際には下記の注意点があります。
- 適用を受けられるのは、青色申告法人のみ
- 対象となる寄付金は、地方改正法の改正法施行日〜平成32年3月31日までに支出したもの
- 本社のある地方公共団体への寄付は対象外
- 地方交付税を受けていない財政が豊かな自治体など、一部対象外地域あり(地方創生が目的のため)
- 10万円未満の寄付金は対象外
◆ 返戻品をもらったら利益計上が原則
個人版ふるさと納税では返戻品の高額化が過熱して、総務省より良識を求めるお達しが出た状況ですが、企業版ふるさと納税にはおそらく返戻品というものはないと思われます。
「地方公共団体が、寄付を行う企業に対し、寄付額の一部を補助金として供与する・入札や許認可で便宜を図る・有利な利率で融資するなど、寄付の代償として経済的利益を与える行為を行ってはならない」とされており、返戻品も経済的利益と考えられるからです。新しい制度のため、まだ詳細が分からない部分がありますが、もし返戻品をもらえた場合には、法人は返戻品の時価相当額を利益(受贈益)として計上する必要があるということにご注意ください。
◆ 結局、企業版ふるさと納税はお得なの?
企業版ふるさと納税は、個人で寄付した場合のように、返戻品の価値を含めたら実質得をする!というものではありません。今までよりはメリットが二倍(正しくは負担が約半分に減る)になるとはいえ、キャッシュは確実にマイナスとなります。名称は似ていても、個人で行うふるさと納税とは全く異なる制度であることを認識する必要があるでしょう。
とはいえ、「寄付」はそもそも見返りを求めてするものではありませんよね。「支店がある地域を応援したい」、「自社の企業理念にかなう事業を応援したい」など、社会貢献を通じて自社の魅力をアピールする、という活用の仕方を考えるのが正解ではないかと思います。
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