ZAIPA BLOG
ザイパブログ
頑張る会社をもっと強くする!節税ブログ
弊社のお客様でも、海外勤務の話が多くなってきました。海外の出張所や海外子会社で長期にわたって仕事をすることになるわけですが、その税務事務については、会社としても初めての経験であることが多く、適切な処理がされていないことがあるようです。今回は海外転勤者の『給与』についての課税をチェックしてみましょう。
◆ 基本を先ずチェック!
海外転勤者の給与に課税される所得税〔日本の所得税〕については、先ずその転勤者が『どのぐらい海外で勤務するのか』がポイントになります。転勤とはいえ、1年未満で戻ってくるようなケースであれば、日本国内での今までの課税と変わりません。日本国内で勤務する他の従業員と同じ課税となります。
転勤期間が1年以上となる場合に違いがでてきます。この1年という期間の判定は、在留資格や国籍には関係しません。例えば転勤の期間が会社からの辞令・契約書等により1年未満と明記されていない場合(つまり、いつ帰国するかが決まっていない場合)には、転勤期間が1年以上になると推定されることになり、税法で規定する『非居住者』に該当することになります。出国日の翌日より『非居住者』として扱われます。
非居住者に該当すると、日本本社から支給される給与には、日本の所得税は課されません。滞在国での課税になります。従って給与から源泉所得税を天引きする必要はなくなります。
1年以上の長期出張の場合、給与については、原則として滞在国〔現地〕での課税となります。
ここで注意することがあります。それは、出国後に『国内勤務期間の給与を支給する』場合です。
出国後に最初に支払う給与が該当する可能性があります。この場合、その勤務期間が全て日本国内勤務である場合を除いて、出国後に支払う給与から源泉所得税を差し引く必要はありません(海外での課税となります。)全て国内勤務分であるときは、20.42%の源泉徴収が必要となります。非居住者に対する国内勤務分給与は、一律20.42%課税を受けるからです。ただし、20.42%課税を受けた給与は年末調整の対象から外れます。20.42%課税のみで課税が完結するわけです。(なお、賞与については、給与と異なる取扱いになりますので注意が必要です。)
・POINT ②
(A)給与が20日締め翌月10日支給の会社で、3/21〜4/20 まで1ヶ月間全て国内勤務。その後4/22に出国。給与支払いが5/10。
↓
このケースは、給与×20.42% の源泉所得税を天引きして会社が納付します。
(B)(A)と同じ会社で、4/18に出国した場合(19.20日は海外勤務だが、日本本社より給与支給〕
↓
このケースは、源泉所得税の徴収は不要です。(海外での課税を受ける。)
なお、非居住者となった海外転勤者については、出国時点で年末調整を行う必要があります。扶養親族の判定も、出国時の現況に拠ります。12/31時点の現況ではないので注意が必要です。生命保険・損害保険料や社会保険料等の控除についても出国日までに支払われた保険料のみを対象とします。
20.42%徴収の源泉所得税(非居住者に対する所得税)については、納付書も通常の納付書と異なりますので、注意が必要となります(非居住者・外国法人についての所得税徴収高計算書で納付します)。
なお、住民税については毎年1月1日時点の居住地で課税判定がされるため、海外転勤者については、日本国内に家屋敷等を有する場合などを除き、課税は受けません。住民税の負担を避けたいのであれば、1月1日より前に出国すべきということになります。
◆ 短期滞在者の場合
1年未満とはいえ、数ヶ月間海外に滞在すると、滞在国によってはその国の税制に従って課税をされることがあります。ただし、暦年(1/1〜12/31)で183日以下の短期滞在時に日本本社から支給される給与については、海外での課税を受けません。俗にいう183日ルール(短期滞在者免税)ですが、この解釈が誤って拡大解釈しているケースが見受けられます。
183日以内の滞在であれば、海外でもらう給与(海外子会社・現地他社から支給)も全て免税という誤解があるようですが、現地で直接支給される給与は、現地で課税を受けます。日本本社から給与が直接支払われている場合のみの海外での所得税免税ですので、注意が必要です。
・POINT ③
(A)183日以下の滞在で、かつ日本の会社(通常 本社)から給与をもらう場合は、その給与について海外での課税は受けない(日本での課税)。
(B)183日以下の滞在でも、現地企業からもらう給与には、現地税法での所得税が原則として課税されます。
短期滞在者はあくまで日本の居住者に該当するため、日本で払う給与は日本での課税対象になるということです。原則として給与は勤務している国で課税されることが、各国にほぼ共通するルールなのですが、この183日ルールはその特例として認められています。
海外で勤務しているが、183日以下の短期滞在。そして給与は日本から支給。それなら日本の課税のみでOKということです。また、仮に滞在国で課税を受けても、その税額は日本での確定申告をすることで、日本での所得税は少なくなります(外国税額控除といいます。)。
海外勤務者が、給与以外の所得がない場合は問題ありませんが、例えば日本国内での不動産所得等の国内所得が別にある場合には、税務署に納税管理人(申告・納税の代理人。日本本社でも家族でも、日本居住者であれば誰でもよい。)の届出をする必要があります。海外勤務者本人は、このような税制の取扱いを知らないことも多いので、会社側から手続きの内容を教えてあげた方が、望ましいでしょう。
文;税理士・社会保険労務士 奥田正名
RECOMMEND
このブログの他の記事
-
-
2021/12/28
-
-
2021/11/07
-
-
2021/10/29
BLOG
NEW POST
-
贈与税から逃げ切れる?相続・贈与の一体課税とは。
税務チームブログ
2021/12/28
-
110万円をちょこっと超えた贈与で、贈与税申告を敢えて選択した方がいい?それってどういうこと。
税務チームブログ
2021/11/15
-
インボイス事業者の公表サイトがOPEN
税務チームブログ
2021/11/07
ARCHIVE