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頑張る会社をもっと強くする!節税ブログ
契約社員やパート、アルバイトなどの『非正規社員』の雇用を改善するとキャリアアップ助成金が受給できるかもしれません。優秀なパートタイマーを正社員にしたい。非正規社員にも研修を実施し、社員育成に力を入れたい。そんな職場環境の整備を推進する会社にオススメの助成金です。
◆ 雇用関係助成金の共通ルール
助成金には、共通のルールがあります。下記の項目すべてにあてはまるか、先ずはチェックです。
□ 会社が雇用保険に加入している
□ 労働保険料をきちんと納付している(未納の場合、申請から2ヶ月以内に納付すればOK)
□ 過去3年以内に助成金を不正受給していない
□ 解雇・退職勧奨などの、会社都合退職がない(※)
□ 支給申請日前1年間に、労働関係法令で違反(未払残業代がある、最低賃金を下回っている等) がない
□ 暴力団関係事業主、性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの関連会社ではない
※解雇日によっては適用となる場合がありますので、その際はご相談下さい。
助成金の財源の一部は、雇用保険で賄われているため、雇用保険の加入と労働保険料の納付は必須です。また、労働関係法令(勤怠管理、残業代の支給、最低賃金、社会保険加入等)を遵守しないと助成金はもらえません。申請時に未払残業代等の違反が発覚した場合は、助成金給付前に、従業員に残業代を支払うことが求められたケースもあります。
◆ 優秀な契約社員やパートを正社員にしたい!(正規雇用等転換コース)
雇用形態 | 助成額 | 一人親家庭加算 | 派遣労働者加算 | 上限(1年度当たり) |
①有期雇用 → 正社員 | 50万円
(40万円) |
10万円 | 10万円 | 15人まで |
②有期雇用 → 無期雇用 | 20万円
(15万円) |
5万円 | − | 10人まで |
③無期雇用 → 正社員 | 30万円
(25万円) |
5万円 | 10万円 | 15人まで |
※助成額は、平成28年3月31日までの時限措置です。※( )内は大企業の額
受給するための要件はとても簡単。就業規則に転換制度を定めたら、下記のステップを踏むだけです。
① キャリアアップ計画書を労働局またはハローワークに提出
② 勤続6ヶ月以上※の非正規社員を正社員に転換する。?正社員として6ヶ月以上雇用する
※次頁の「有期実習型訓練」修了者は、雇用期間が3ヶ月以上6ヶ月未満も対象となります。
ただし、転換前が試用期間など、正社員になることを前提として雇い入れた場合はNGです。ここでいう「正社員」とは、会社毎に差異はありますが、一般的には、下記を満たす者になるでしょう。
① 契約期間の定めが無い
② 給与が月給制
③ 昇給・ボーナス・退職金の支給がある
有期雇用から無期雇用に転換した場合は、5%以上の基本給UPが必要ですが、正社員転換の場合は特に定めはありません。それは一般的に正社員の方が非正規社員よりも待遇が良いとされているからです。会社では「正社員」と称していても実態はパートタイマーと同じ場合は、否認される可能性があります。
◆ 非正規社員にも研修や教育訓練を受講させたい!(人材育成コース)
訓練の種類 | 訓練経費助成 | 賃金助成 | ||
Off−JT
(学科訓練) |
区分 | 一般職業訓練(注1
有期実習型訓練(注2 |
中長期的
キャリア形成訓練(注3 |
1時間あたり800円
(大企業500円) ※上限:1訓練コース1人1,200時間 |
100時間未満 | 10万円( 7万円) | 15万円(10万円) | ||
200時間未満 | 20万円(15万円) | 30万円(20万円) | ||
200時間以上 | 30万円(20万円) | 50万円(30万円) | ||
OJT
(職場訓練) |
1時間あたり700円(700円) ※上限:1訓練コース1人680時間 |
※( )内は大企業の額
※「Off-JT」=仕事の場を離れて行う人材育成(例:集合研修、外部講師によるセミナー等)
「OJT」=実際の仕事を通じて行う人材育成(例:先輩が部下に行う日常業務の教育等)
注1)一般職業訓練は、Off-JTのみの訓練で、20時間以上かつ1年以内の訓練です。
注2)有期実習型訓練は、Off-JTとOJTを組み合わせた訓練で、1ヶ月平均71時間以上かつ3ヶ月以上6ヶ月以下の訓練です。総訓練時間のうちOJTの割合が1割以上必要です。
注3)中長期的キャリア形成訓練は、厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練です
例えば、3ヶ月間の有期実習訓練を行う場合、下記の金額を受給できます。
(Off-JT 150時間、訓練経費 250,000円、OJT 400時間)
Off-JT賃金助成 120,000円(150時間×800円)
Off-JT経費助成 200,000円(上限20万円)
OJT賃金助成 280,000円(400時間×700円)
合計 600,000円
250,000円の訓練経費を払っても十分おつりが出ます。
このコースは、従業員の協力無しでは申請できません。具体的には、下記のステップが必要です。
① キャリアアップ計画書を労働局またはハローワークに提出
② ①とは別に訓練計画届・訓練カリキュラムを作成し、労働局またはハローワークに提出
③ 有期実習型訓練の場合は、従業員にジョブ・カードセンターでジョブ・カードを作成してもらう
④ 訓練開始届を提出(訓練開始後1ヶ月以内)
⑤ 訓練の都度(ほぼ毎日)、従業員に訓練日誌(訓練の感想)を書いてもらう
⑥ 訓練終了後、ジョブ・カードの評価シートで、従業員に自己評価してもらい、企業も評価する
⑦ 訓練終了後2ヶ月以内に支給申請する
ちなみにジョブ・カードとは、履歴書と職務経歴書を詳しくしたもので、訓練を受講する前にジョブ・カードセンターでキャリア・コンサルティング(無料)を受けて交付してもらう必要があります。通常2〜3回の面談を必要とし、平日の日中に通ってもらう必要があります。
人材育成コースは、従業員に書いてもらう訓練日誌(訓練の感想)が最も重要です。OFF-JTは外部講師であれば経費の支払い等で受講を確認できますが、OJTは受講の証拠が何もありません。訓練日誌がすべてです。訓練日誌を具体的に書いてもらうことによって、きちんとOJTを受けていると立証されます。ルーチンワークで同じような訓練内容・感想が連続している場合は、訓練していないと判断され、申請が通らない可能性もあります。従業員には、かなり労力がいる作業になります。
また、一番トラブルになりやすいのもこの助成金です。実際に訓練を受けていないのに訓練日誌を書くことを強要されたと従業員が労働基準監督署に訴え、そこから不正受給が発覚した例もありました。ちなみに不正受給が発覚した場合、下記のリスクがあります。
1.不正発生日以降に受けた助成金は、全額返還(年利5%加算)を命じられます。 (訓練の水増しが発覚すると、実際に行っていた他の訓練も含め全額返還の対象になります。)
2.一度でも不正受給すると、以後3年間は雇用関係の助成金を受給できません。
3.不正の事実があった場合、会社名と代表者名などがインターネットで公表されます。
4.特に悪質な場合は、詐欺罪などで刑事告発されます
不正受給事業主として企業名が公表され、銀行からの融資が受けられなくなり、取引先からも取引を断られて倒産に至った会社もあります。不正受給のリスクは全額返還だけではありません。十分に注意が必要です。
◆ 非正規社員の賃金をUPしたい!(処遇改善コース)
⇒既存の賃金テーブル(無い場合は新たに作成)を3ヶ月以上運用後、基本給を2%以上UPした場合、1人当たり1万円(大企業は7,500円)。職務評価を行うと、20万円(15万円)加算。(※助成額は、平成28年3月31日までの時限措置です。)
すべての非正規社員の基本給の賃金テーブルを2%以上増額させることが必要です。 賃金テーブルの増額改定後、6ヶ月分の賃金を支給後に申請できます。
◆ 非正規社員にも健康診断を受けさせたい!(健康管理コース)
⇒就業規則に健康管理制度を定め、法定健康診断の対象外(勤務時間が正社員の4分の3未満)の方を延べ4人以上に健康診断を実施した場合、40万円(大企業は30万円)もらえます。 健康診断費用は全額会社負担です。助成金は1回限りですが、受給後も実施することが必要です。
◆ 時間制限がある優秀なパートタイマーを短時間正社員にしたい!(短時間正社員コース)
⇒就業規則に短時間正社員制度を定め、勤続6ヶ月以上の従業員(または新たに雇用する者)を週30時間以上の短時間正社員に転換すると、1人当たり30万円(大企業は25万円)もらえます。
一人親家庭の場合、さらに10万円加算 ※助成額は、平成28年3月31日までの時限措置です。雇用されている正社員が利用する場合、育児および介護以外の事由であることが必要です。短時間正社員に転換・新規雇入れ後、6ヶ月分の賃金を支給後に申請できます。
◆ パートタイマーの労働時間を週30時間以上に延長したい!(週所定労働時間延長コース)
⇒1人当たり10万円(大企業は7,500円)
週の労働時間が25時間未満の方を週30時間以上に延長し、社会保険加入させることが必要です。延長した際には、週所定労働時間と社会保険加入状況を明確にした労働条件通知書または雇用契約書を作成し、交付することが必要です。労働時間を延長した後、6ヶ月分の賃金を支給後に申請できます。
?
キャリアアップ助成金は、制度適用から申請までの期間が長いこと、有期実習型訓練以外のコースは、すべて就業規則や賃金規程に定めが必要なことが特徴です。非正規社員の職場環境を改善する良い助成金ですが、助成金の受給だけを目的としている会社には、残念ながらオススメできません。一度定めた就業規則は、助成金受給後も継続して運用しなければならず、合理的な理由が無い限り不利益変更できないからです。この機会に職場環境を整備したいとお考えの方は、是非ご相談下さい。
文;社会保険労務士 吉田 彩乃
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