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頑張る会社をもっと強くする!節税ブログ
人材の確保に苦心する会社が多くなっています。2016年8月時点の有効求人倍率は、全国平均で1.37倍、愛知県は1.6倍と、人手不足を顕著に示しています(倍率が高いほど人手不足)。更に、長期的な視点で考えると「生産年齢人口(15〜64歳の人口)」の減少も無視できません。
2010年には8000万人以上の生産年齢人口は、2030年に6700万人ほどになり、「生産年齢人口率」は63.8%(2010年)から58.1%(2030年)に下がると推定されています。働き手である生産年齢人口は、黙っていても減っていくのです。
このような環境下では、少ない人数でも利益を確保できる体制を作っていくことが必須となります。そこで今回は、「労働生産性を上げるには?」というテーマで考えていきたいと思います。
◆労働生産性とは
生産性とは、大まかに言えば、投資に対してどれだけの回収が得られたかの割合のことです。労働力(従業員数)という投資に対して、どれだけの回収(営業利益)が得られたかを測るのが、労働生産性です。労働生産を求める算式は、いくつかありますが、経済産業省が公表しているローカルベンチマークでは、下記の算式で求めるものとしています。
算式通りに考えると、労働生産性を高めるには利益を増やすか、従業員数を削減するかということなります。とはいえ現在の人手不足の景気環境では、仕事はあるけれども、それに対応する従業員数がいない。従業員さえ採用できれば売上を増やせるのに・・・というのが大半の経営者が思うところではないでしょうか?(もちろん、仕事のできない従業員は抱え込んではいけませんが)
従業員数を削減することで売上の受注ロスが生じ、結果として営業利益も減ることになるので、人員を減らすのではなく、人員を維持したままで売上や原価率の改善をするというのが、現代風の労働生産性向上といえます。
ちなみに、ローカルベンチマークとは、企業の経営状態を把握するために経済産業省が、新しく提供している分析ツールです。今後、いろんな場面で使われるようになると推測しています。
◆ローカルベンチマークによる分析
飲食店のA社の事例で分析していきましょう。
A社の労働生産性は(営業利益)50万円÷(従業員数)5名=10万円となります。1ヶ月で従業員1人当たり10万円の営業利益を生み出している会社だということが明らかになります。
ローカルベンチマークでは、帝国データバンクの情報に基づき、業種ごとの平均値が公表されています。さっそくA社の労働生産性を飲食業の平均値と比較してみましょう。比較すると下記の通りとなります。
平均値と比較すると約53万円の差があり、A社は労働生産性に改善の余地があることが確認できます。したがって、現在の生み出す営業利益に対して従業員数が過剰である可能性もあり、対策を検討する必要があります。
また参考として、大手企業の労働生産性も知っておきましょう。例えば、サイゼリアは171万円、ユニクロは395万、清水建設は605万円、トヨタ自動車は818万円となっています。全て東証一部上場の会社ということもありますが、圧倒的な労働生産性を持ち合わせていることがわかります。
◆労働生産性を向上するには
労働生産性を向上するには、大原則として「売上単価」「販売数量」を上げて、そのうえで「社員数・総労働時間」「経費(原価)」の上昇を防ぐことが必要となります。具体的な対策例としては、次のことが考えられます。
①「安易な値引き受注はしない。」
なぜなら、販売数量が上がったとしても原価率が上昇してしまうからです。結果として、利益確保のために労働時間が増加し、人件費が増えることで利益を下げることになります。社内目標を利益ではなく、売上で設定している会社ですと安値受注による売上達成が横行することもあるので、注意が必要です。売上は増えて忙しいが、なぜか儲からないというジレンマに陥っている会社は、販売単価を見直すことを優先すべきです。儲からない仕事から撤退することも場合によっては必要でしょう。
②「回転数を上げる。」
売上の回転数を上げる イコール 1件あたりの取引時間を短縮して、売上数量を増やすことを意味します。
例えば、コンビニでは、支払いを電子マネーに移行させてレジで顧客を待たせる時間を減らすことで販売ロスを減らしています。牛丼で有名な吉野家では、従業員やお客様の動線を考慮して店のレイアウトを工夫しています。最近、話題なのは俺の株式会社(俺のフレンチなどで有名)です。飲食店ですが、質の高い食材を惜しみなく使うことで支持を集めています。原価は高くとも、立ち食い形式にすることで顧客に長居をさせず、回転率を高めて取引数(食事をした人の数)を増やすことで、高い原価であっても、営業利益は確保できるわけです。
また、社内の作業回転率を上げれば、労働時間・経費(人件費等)が減少します。社内の作業回転率を上げたい場合は、従業員に業務日報を書いてもらう(仕事の見える化)。パソコンを毎日使う仕事であれば、動作の早いパソコンを使うことで時間ロスを防ぎ、多くの仕事をこなすことができます。(動作の遅いパソコンで、のんびり仕事されているケースは意外とあるようです・・・)
③作業のマニュアル化
作業工程を標準化することも大切です。業務を標準化することによって、労働時間の削減やそれに伴う人件費削減等、経費が抑えられます。また、品質の安定を図ることができます。例えば、新入社員には通常教育への時間が必要となり、生産性が下がってしまいますが、誰でもマニュアルを見れば再現できるという状態であれば、新入社員でも生産性を上げることが可能です。ちなみに弊社でもクラウド上に各種マニュアルを整備してあります。
④給料に見合った仕事をしてもらう。
当たり前のことですが、高い人件費の人に単価の安い仕事をさせないということも大切です。入社10年目の社員と、入社1年目の社員では求められる生産性は異なってきます。そのため、人と仕事の正しいマッチングが大切です。10年目の社員に1年目の社員と同じ仕事をさせてはいけない、ということですね。
⑤定期的なコストの見直し
仕入等のコストを値下げ交渉ができるのにしていないということもあります。また、反対に売上面でも最初の契約では約束していなかった業務依頼が増えているものの料金は据え置きで採算が合わなくなるということもあります。そのため、定期的な見直しは生産性の向上に繋がる作業であるといえます。
◆まとめ
生産性を高める イコール 社員を減らすということではありません。人数は減らさずに利益を増やすのが、現代の生産性向上といえます。現在の景気環境では、人手不足(対応力不足)による受注ロスが増えていると思われます。良い人材が確保できていれば、仕事は受注しやすい時代になったと感じています。逆に社員を減らせば、売上が増やしづらくなります。
生産性の低い会社と言うのは、厳しい表現をすると、安値受注や原価(仕入・外注費)の管理不十分、社員の時間管理不足という要因によって招かれる結果です。「仕事はすごく忙しいのだが、なぜか儲かっていない。」と思う方は、先ず生産性を確認してみるといいかもしれません。生産性を高めていける会社こそが、今後生き残っていける会社であると思います。
文:川崎 達也
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