ZAIPA BLOG

ザイパブログ

頑張る会社をもっと強くする!節税ブログ

2015/11/20

2015/No.10 円満な財産分割のためにすべきこと

平成27年から、相続税について基礎控除の減額などの大幅改正が行われました。税金対策ばかり大きく取り上げられているような気がしますが、節税よりも大切な「財産の分割」の準備はどうでしょうか?今回は、財産分割時のトラブルになりかねない「遺留分」への対応を中心に、円満な財産分割のための対策をご紹介します。

◆ 相続が発生したら、財産はどう分けるの?

相続が発生した場合、財産の分割方法は、①遺言書が「ある場合」と、②「ない場合」で異なります。

①遺言書がある場合 原則として、法定相続分よりも遺言書に書かれた内容が優先されます。(ただし、相続人には、遺留分という権利があるので注意が必要です。)遺言書には法的効力がありますが、相続人全員が合意すれば ②の遺産分割協議による分配も可能です。

②遺言書がない場合 相続人間の話し合い(遺産分割協議)により財産の分け方を決めます。まとまらない場合は家庭裁判所での調停や審判を経て、最終的には法定相続分による財産分割になるのが一般的です。

◆ 法定相続分と遺留分とは?

さて、法定相続分と遺留分とは何でしょうか?「法定相続分」とは、民法が定めている相続人の取り分(割合)のことです。また、「遺留分」とは、相続人の生活保障のために認められた、最低限の財産を相続する権利の割合です。そのため遺言書があっても、財産分割が遺留分に満たない相続人がいた場合、その相続人が「遺留分が侵害されている!」と権利を主張し、財産分割を巡って争いになる可能性があります。

letter201510-1

 

法定相続分と遺留分の割合は、上の事例のようになっており、遺留分は一定の場合を除き、法定相続分の2分の1と定められています。なお、相続人であっても兄弟姉妹には、遺留分はありません。

◆ トラブルを避けるためにできること〜遺言書作成と遺留分放棄の活用〜 

遺言書は、相続を「争族」にしないための有効な手段ではありますが、遺言書を残せば全ての財産分割のトラブルを避けられるわけではありません。前述のとおり、遺言書が遺留分を侵害するものであれば争いがおこる可能性があります。それを避けるためには、そもそも相続人全員の遺留分を侵害しないような遺言書の内容にするか、もしくは、「遺留分の放棄」という手続きを検討するとよいでしょう。「遺留分の放棄」とは、最低限の財産を相続する権利を放棄することです。遺留分の放棄をした相続人は、遺言で指定された財産が少なくても(たとえゼロでも)文句は言えません。

例えば、相続人が子2人、財産が同族株式4億円、預金1億円のケースで、同族会社の後継者がAだとします。3つのパターンで、遺言書と遺留分放棄の効果を検証してみましょう。

 

(1)遺言書がない場合 →法定相続分で分割

子A 同族株式2億円、預金0.5億円

子B 同族株式2億円、預金0.5億円 となります。

これでは、同族株式の半分が後継者ではないBに相続されてしまいます。会社にとっては不安な要素になります。

 

(2)Aにすべての同族株式を相続させ、その他はBに相続させる遺言書を残した場合

子A 同族株式4億円、 子B 預金1億円 となります。

同族株式はすべてAに相続させることができましたが、Bは総額5億円のうち1億円の財産(全体の20%)しか相続できていません。BがAに対して遺留分を請求すると、遺留分(25%)と実際の相続分(20%)の差額2,500万円については、AがBに対し自分の財産から金銭等で補償するか、無理ならば同族株式を渡さなければなりません。これでは、遺言書を書いた効果が薄れてしまいます。

 

(3)(2)と同じ遺言書があり、Bは「遺留分の放棄」をしていた場合→【遺言書+遺留分の放棄】

子A 同族株式4億円、子B 預金1億円 となります。

いっけん(2)と同じ分割に見えますが、Bは遺留分の放棄をしたため、遺留分を侵害している部分についてAに請求することができません。つまり、分割は遺言書どおりになります。

 

◆ 遺留分の放棄は、どう進めれば良いの?

相続開始前に、相続人に遺留分の放棄をしてもらうためには、 [1]被相続人(財産を残す人)の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続人が、遺留分放棄許可の審判を申し立てます。[2]申し立て受理後、遺留分の放棄をする相続人が裁判所で面談を受け、[3]許可(または却下)されるという流れです。財産がもらえる権利を自ら放棄する、ということになるため、裁判所は、「本当に放棄していいの?」という意思確認とデメリットの説明をします。申し立てに対して却下された事例は少ないようですが、家庭裁判所は次の3点を考慮して許可をすべきか判断します。

①遺留分放棄が、放棄をする人の自由意思に基づくものであること(強要されていない)

②遺留分放棄に、合理性・必要性があること(充分な所得がある、相当の贈与を既に受けているなど)

③遺留分放棄と引き替えの代償が支払われていること(何らかの贈与を、放棄する者に実施)

 

◆ 遺言書を作成して思いを伝える

遺言書に書く内容は、財産分割など法的効力のあるものを記載するのが通常ですが、それ以外を書いてはいけないわけではありません。法的な効力はなくとも、なぜこのように財産を分けたかなどの思いを書き残す’(付記事項と言います)ことで、相続人が争うことなく、遺言どおりの相続を受け入れてくれる可能性は高まります。「自宅と預貯金しか財産がないし…」と言っても、分割しにくい財産しかないからこそ争う、ということも多いのです。「私たち家族は大丈夫」ではなく、相続人が円満な財産分割ができるように事前に準備をしておくことは、財産を残す者の仕事だ、と考えるべきだと思います。

文;税理士 松浦圭子

 

CONTACT

経営のこと、税務のこと、労務のこと、
お気軽にお問い合わせください。