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頑張る会社をもっと強くする!節税ブログ

2017/02/22

2017 .No02 2017年の労働環境と会社のあるべき対応

人手不足が進んでいます。愛知県の有効求人倍率は2016年末で1.6倍を超えています。東京にいたっては2.0倍を超えています。そのなかで、いかに社員採用を進めていくかという課題に頭を悩ましている会社は増える一方です。

そして、新規採用ばかりに目が向きがちですが、定年延長も含めた社員が仕事を継続できる制度・社内環境の整備(社員が流出しない会社となる努力)も求められます。今回は、労働市場と会社のあるべき対応についてこうなっていくのではないか?という予見も含めて、書いてみました。皆様の参考になれば幸いです。


◆ 社員の定年は60歳それとも65歳?

新規採用は重要な課題ですが、長く会社にいてくれてスキルの安定した熟練社員の活用も有効な施策の一つです。そのために定年延長は有効な施策の一つになってきています。

ところで、自社の定年はいつですか?という問いに、はっきりと答えられる社長は意外と少ないのではないでしょうか?自社の就業規則に書いてある年齢で定年退職するという認識だと思いますが、そもそも就業規則が法令の沿った内容で記載されていないケースや、改正に応じたアップデートがなされていないケースも多いと思います。

現在の法令に沿った定年は、すべての会社において60歳です。

60歳を下回る定年は設定できません。平成25年4月1日より高年齢者雇用安定法が改正施行されたことにより①定年が60歳と定められ、②さらに定年後も65歳までは継続雇用することが義務付けられています。

特例として、平成25年4月1日前に就業規則を下記のように改定した場合に限定して、②の継続雇用する年齢を65歳前にすることが認められています。平成25年4月1日以後に作った会社では、下記の運用はできません。

 

就業規則記載例

(定年等)

第●条

1.従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した年度の末日をもって退職とする。ただし、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者については、65歳まで継続雇用する。その際に賃金の見直しを行うことがある。

2.前項の場合において、次の表の左欄に掲げる期間における当該基準の適用については、同法の左欄に掲げる区分に応じ、それぞれ右欄に掲げる年齢以上の者を対象に行うものとする。(上記第1項で65歳とあるのを下記年齢に読み替えます)

平成25年4月1日から平成28年3月31日まで  61歳

平成28年4月1日から平成31年3月31日まで  62歳

平成31年4月1日から平成34年3月31日まで  63歳

平成34年4月1日から平成37年3月31日まで ? ? 64歳

 

 

特例の適用がない会社では、定年後も65歳までは継続雇用の義務があることです。社員から60歳を過ぎても働きたいという希望があれば、体調不良などの労務提供が困難なケースを除いて、65歳まで雇用を継続することが必須となります。

『なんだ、それでは65歳定年と変わらないでしょ?』と思われる方も多いでしょうが、継続雇用はあくまで『雇用の継続』が義務なだけで、待遇の継続が求められているわけではありません。つまり、定年後の雇用条件は新たに取り決めることができますし、その雇用条件で本人が納得しなければ雇用を継続する必要はありません。

とはいえ、人手不足の昨今では、熟練した方であれば、勤務日数が減っても継続して働いてくれた方がありがたいという会社も多いことでしょう。年金と雇用継続給付がもらえるケースであれば、会社が本人に支払う給与も少なくて済む(給与が下がっても、本人の手取りが定年前より減らない)ことも可能となり、本人は出勤日数が減っても手取りは変わらず、会社も給与コストが下がることになります。

letter201702-1

 


 

◆ 世の中は、分業体制になる。

1人の正社員が、一つの仕事の全工程を担うことが難しい時代になってきました。理由は、仕事そのものが高度化・複雑化・短納期化していくからです。顧客の要求水準が上がることがあっても下がることは考えにくい。発注者の立場で考えていただければ納得のいくことだと思います。

この人手不足のなかで、1人の正社員が全工程を担うと生産性が落ちます。多くの案件を同時にさばくことができなくなる。

仕事には、作業の領域と付加価値領域(判断・企画・営業。利益を自ら創る領域)があり、作業領域をこなしながら付加価値領域を広げていくことは、社員の時間が有限である以上、自ずと限界がきます。

昨今では残業代を適正に払っていても、残業が多いだけでブラック企業と揶揄されることもあり、それだけ働き手がワークライフバランスを意識する機会が増えています。とはいえ、会社全体での仕事量そのものは減らない(減らせば利益が減る)わけで、無理のない時間で今まで以上の生産性を実現しようとすれば、付加価値領域を主に担うヒトと、作業領域を担うヒトで仕事をシェアするという流れになるでしょう。いわゆる分業です。一つの仕事を複数人で完結させるわけです。

もちろん、作業領域をこなす人を追加採用したからといって、付加価値領域を担う人の人件費を下げられるわけではありません。付加価値領域を担う人は、付加価値領域の仕事の『回転数』を上げていく必要があります。結果として、各人の残業時間は減るが一時的には総人件費は増えることになり、利益を維持するためには付加価値領域の仕事を増やすことは必須となります。

作業領域を担うゾーンとして、非正規雇用者(パート・派遣社員・有期契約雇用者など)や、業務を限定した社員の採用はより活発化することでしょう。その一方で、通常の正社員は付加価値領域を担うヒトとして、自社の正社員の定義(わが社の正社員は何をするヒトなのか)を見直す必要がでてくると思われます。もちろん、正社員の待遇は相応のものである必要があります。正社員の価値は、分業化が進むなかで一層輝くことになります。

人手不足だからといって、誰でも彼でも正社員にするのではなく、むしろ正社員化は慎重に行う。それが、いま目の前で頑張っている正社員へのマナーなのかもしれません。リーマンショック時の人余りの時代を潜り抜けて正社員を勝ち取った人の価値は、やはりスゴイのではないでしょうか?

そんな面倒なことを考えるくらいなら、受注を減らして、他のコストをカットすることで現状を維持することを選択する経営者も出てくると思われます。ヒトに対する考え方が、営業方針も決めてしまう。そういう時代に入っていくのだと推測しています。


 

◆ 正社員採用のルートは3種類ある

正社員を採用するルートは、①新卒採用 ②中途採用 ③非正規雇用者の正社員転換 の3つです。?と?は、いわゆるポテンシャル採用と呼ばれます。わかりやすく言えば『たぶん、仕事できるだろうと期待しての採用』です。実際の仕事を経験させて採否を決めたわけではなく、あくまで面接のみで採用を決めていると思います。

面接で輝く人が採用されやすいため、面接で自分を良く見せることが上手な人は採用されやすくなります。そのかわり採用時の会社の期待度が高くなるため、仕事ができなかった場合はミスマッチが生じやすく、会社は期待外れの人材に無駄なコストをかけてしまうことになります。

一方で、?は実際の仕事ぶりをみてから正社員に転換することになるため、正社員にしてもミスマッチは生じにくい。半年や1年もの間、仕事ができるふりを継続することは通常できないので、仕事ができないヒトはそもそも転換されることもありません。

仕事のできるパートや派遣社員などを正社員登用するわけですが、有期契約社員(契約期間が半年とかの期間限定社員。更新しなければ自動退職となる)から正社員転換するケースも増えています。ヒトの見極めには、やはり相応の時間がかかるわけで、中途採用をする上では本来は有期契約社員からスタートさせることは理に適っていると言えます。

この有期契約社員等の非正規雇用者を正社員に転換する会社には、キャリアアップ助成金という制度があります。半年の雇用をしたうえで、正社員化すれば助成金がもらえます(1人あたり30万円〜90万円)。

もちろん、就業規則の監督署への提出・整備は必須ですし、事前にキャリアアップ計画を策定する必要もあるため、どんな会社でも貰えるわけではありません。残業代や休日の付与が、労働基準法を下回る会社の受給も難しいです(そもそも下回ってはいけませんが)。会社の労働環境の整備・見直しは必要となります。

人手不足のなか、採用基準を落として正社員採用する会社が増えていることは否めませんが、その一方でミスマッチが多発していることも間違いないことです。それを考えると、目の前で仕事を頑張ってくれていて、会社にも馴染んでいるパート・派遣社員などを正社員にすることは、社内の同意も得やすい採用となります。仕事のできるパート・派遣社員などを正社員転換していく傾向は増えていくと思います。

採用の一番の問題は、いつの時代でも『ミスマッチ』です。人手不足の時代は労働市場に流出してくる人材の劣化が顕著な時代です。

そういった環境のなかで、いかにミスマッチを生じさせないか。その視点で考えると、正社員採用はやはり狭き門であるべきと思います。妥協はしない。その代わり採用したら、全力で面倒を見る・相応の待遇にするという会社の覚悟は必須なのでしょう。

文;税理士・社会保険労務士 奥田正名

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