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頑張る会社をもっと強くする!節税ブログ
◆ 取締役が会社とお金の貸し借りをするときの手続き
取締役が会社(法人)と取引を行うときは、実は株主総会の承認決議が必要となります。(取締役会設置会社では取締役会の承認。)
モノの売り買い・お金の貸し借りなどを会社と取締役で行うとき、取締役が会社に損害を与えてはいけないので、適正な売買価格なのか、不当な金利で会社に課していないかなどを株主総会がチェックするわけです。下記が根拠となります。
(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
もっとも、家族または代表者が100%株式を所有している、大半の同族会社では株主総会自体は形式的なものであり、実際にこの手続きを踏んでいる会社は少数ではあるでしょう。また、この株主総会がないと税務署が問題があると指摘することも考えれないでしょう。つまり、手続きを気にする必要はないということになります。
◆ 取締役が会社からお金を借りる場合に注意すること
取締役が会社からお金を借りる(決算書では、短期貸付金として表示されるケースが多いでしょう)場合は、適正な利率で利息をつけないといけません。会社は取締役にお金を貸し、取締役は代わりに会社に金利を払うわけですが、その利率はどのように決めるべきでしょうか?上記の会社法の考え方でいえば、会社が損をしない利率にしなさいということになり、税法もその考えに沿っていると考えて良いでしょう。損をしない利率 イコール 会社が融資を受けているときの利率 ということになります。銀行から1%でお金を借りている会社は、取締役に貸すときも損をしないように1%未満でお金を貸してはいけないことになります。この考え方が、所得税法基本通達36−49で規定されています。
無借金経営の会社の場合には、上記の特例基準割合を金利として付すことになります。平成27年・28年の場合は1.8%となります。おおむね現在の融資利率に近い水準ではあります。(名古屋の会社は、もっと低い金利で調達してるかな・・・)
この利息を付けない場合は、会社は損をすることになり、逆に取締役は得することになります。その得をした金額を経済的利益と呼びます。取締役への経済的利益 イコール 役員への給与となり所得税が課されることになります。また会社は利息を付す・付さないにかかわらず利息相当額の利益があったものとして課税を受けます。このため、多くの税理士事務所では役員へお金を貸しているときは利息を付ける処理を勧めるわけです。
なお、金利に大きな変動がない限りは、経済的利益=定期同額給与(役員への月給)と判断して差し支えありません。イメージとしては、金利をもらってなくとも、法人税においては金利をもらったうえで同額の給与を払ってプラスマイナスゼロだと考えるわけです。ただし、所得税は給与だから課税するよということになります。
◆年5,000円以下の金利は無視してもOK
会社は利息を付さなければいけませんが、年間5,000円以下の金利については付さなくとも一切の課税は生じません。先ず所得税法基本通達36−28で課税しない旨があり、個人に所得税が課されることはありません。
(課税しない経済的利益……金銭の無利息貸付け等)
36−28 使用者が役員又は使用人に対し金銭を無利息又は36−49により評価した利息相当額に満たない利息で貸し付けたことにより、その貸付けを受けた役員又は使用人が受ける経済的利益で、次に掲げるものについては、課税しなくて差し支えない。
(1) 災害、疾病等により臨時的に多額な生活資金を要することとなった役員又は使用人に対し、その資金に充てるために貸し付けた金額につき、その返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける経済的利益
(2) 役員又は使用人に貸し付けた金額につき、使用者における借入金の平均調達金利(例えば、当該使用者が貸付けを行った日の前年中又は前事業年度中における借入金の平均残高に占める当該前年中又は前事業年度中に支払うべき利息の額の割合など合理的に計算された利率をいう。)など合理的と認められる貸付利率を定め、これにより利息を徴している場合に生じる経済的利益
(3) (1)及び(2)の貸付金以外の貸付金につき受ける経済的利益で、その年(使用者が事業年度を有する法人である場合には、その法人の事業年度)における利益の合計額が5,000円(使用者が事業年度を有する法人である場合において、その事業年度が1年に満たないときは、5,000円にその事業年度の月数(1月未満の端数は1月に切り上げた月数)を乗じて12で除して計算した金額)以下のもの
これを受けて、法人税側でも、この5,000円以下の利息については、会社がもらってなくとも法人税の課税対象としなくてよい(取締役の給与としなくて良い)と規定されています。下記です。
(給与としない経済的な利益)
9−2−10 法人が役員等に対し9−2−9に掲げる経済的な利益の供与をした場合において、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、当該法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないものとする。
こういうの見ると、税法の整合性が所得税と法人税でとられていて美しい・・・と、うっとりしますね(しませんか?)
◆逆に、会社が取締役からお金を借りる場合は利息をつけなくても良いのか?
このご相談をいただくことがありますが、結論としては無利息でOKです。会社法の考え方に拠れば会社が損をしないことは問題はありません。税法では法人税では金利を払わない分、課税所得が増えるので指摘を受けることはありません。また所得税では、実際に収受していないお金(この場合は利息)に課税されることは、不動産等のみなし譲渡に該当しない限りはありません。(みなし譲渡のことは、別の機会に解説しますね)
もちろん利息を付しても構いませんが、このときも適正な利率で設定が必要だと考えられます。明確な規定はありませんが、実務的には前述した利率で設定することになるでしょう(それ以外の合理的な理由が通常はないからです。)
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