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名古屋の会社を強くする労務ブログ

2017/11/17

労災保険加入手続きと保険料について(建設業編)

建設業は、元請け・下請けの関係性や仕組みが複雑です。労働保険の加入手続きにおいても煩雑で分かりにくいです。なぜ煩雑になるのか?その理由を整理してみようと思います。


①元請け・下請けとは?

 

元請けと下請けの違いは、「仕事を誰から請け負っているか」という点です。依頼人から直接仕事を請け負う業者が「元請け」、元請け業者から請け負う業者が「下請け」です。下記の図を参考に、家を建てようとした場合の例で説明します。

 

購入者(Aさん)はハウスメーカー(B社)と契約します。Aさん(依頼人)から直接仕事を依頼されたB社が「元請け」に該当します。

 

通常、B社は、基礎工事から内装まで全て自社で完結することはなく、各部門の専門業者に委託します。例えば、電気工事はC電気工事店へ、水道工事はD水道工事会社へといった具合です。これらのB社(元請け)から請け負う業者(C電気工事店・D水道工事会社)が「下請け」に該当します。


➁労災保険の加入方法について

 

一般的には、個々の会社ごとに労災保険を設立させます。

 

しかし、建設業の取り扱いは少し特殊で、各下請業者・元請け業者で一体とみなし、(図の青いで囲った部分を1つの会社とみなすイメージです)工事現場全体(A邸)が1つの事業体として取り扱われる為、元請け業者に労災の保険加入義務が生じます。

いわゆる「現場労災」です。このしくみにより、万一現場作業に係る事故が起きた場合、元請け・下請け業者に使用される全ての労働者(※事業主・役員・一人親方等は除く)は、元請け業者が加入する現場労災で補償されることになります。

※労災は、労働者の業務上・通勤途中の災害を補償することが目的のため、事業主は補償対象になりません。

ただし、雇用保険・社会保険・事務所労災(緑ので囲った部分の担当者が該当します)は個々の会社での加入手続き・保険料納付が必要です。


労災保険料の計算方法について

 

原則、全従業員の賃金総額×労災保険料率(業種により決定されます)で算出します。

しかし、建設業の場合、下請けも含め一の事業体とみなすため、下請け従業員の賃金(その下に更に孫請け業者がいる場合は、その従業員の給与を含む)が明確にならないと計算出来ないことになってしまい、現実的ではありません。そこで、特別に下記の計算方法で保険料を計算することが認められています。

請負金額×労務比率※(工事の内容により決定されます)×労災保険料率

※労務比率とは売上に対する人件費の割合というイメージです。


特別加入制度について 

 

元請け業者が加入する現場労災で、補償の対象外となってしまう事業主等は、労働者ではありませんが、現場で仕事をする以上、事故に合う可能性があります。そこで、各会社の中小事業主や一人親方(従業員を雇用していない一人社長が該当します)等を補償の対象にした「特別加入制度」があります。

加入する為には、一定の加入条件があります。

(1)労働保険事務組合や一人親方団体に委託をすること

(2)中小事業主・一人親方の条件に該当すること

※詳細条件は、厚生労働省のホームページにてご確認下さい。

 


⑤特別加入保険料について

 

事業主には賃金の概念がない為、給付基礎日額※という単位を使います。3,500円〜25, 000円の中から実態にあった金額を選択し、下記の計算方法で算出します。

※日給のようなイメージで、労災事故発生時の給付額を計算する基礎となります。設定額を低くした場合、保険料は安くなりますが、当然補償額も低くなります!

給付基礎日額×365日×労災保険料率


その他

 

工事を開始した月の翌月10日までに管轄の労働基準監督署に開始届を提出する必要があります。(ただし、一括有期としての届出には、請負金額が1億8000万円以下であること、隣接している県であることなど別途一定の条件があります。)

このように、建設業は通常に比べ、煩雑な手続きが必要になります。

安全配慮を過信し、未加入状態で工事を行ったり、正しく加入手続きが出来ていない状態で事故が起きた場合、事業主に追徴金が課されるだけでなく、遺族の方が賠償責任を訴え、裁判に発展している事例も見受けられます。

正しく加入し、安心して働く環境を整えることは、元請け業者の重要な使命であるとともに、事業主自身が安心して本業に取り組むためにも必要な訳です。

もちろん、無事故で工事完了することが1番なので、安全配慮義務もお忘れなく!!

 

 

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