印紙が貼ってあるかどうかは、税務調査でも必ずチェックされます。仕事の契約をするときの請負契約書に①印紙が貼ってあるか?➁貼ってある印紙の金額が正しいか?の2つがチェックされます。なお、今回は正確性よりも分かりやすさを重視して、実際の経理実務で判断する必要のないものは省略してます。ご容赦ください。
先輩!仕事を請負ったときの契約書っていくらの印紙を貼れば良いのですか?お客様からの質問なので、速やかに正確に&わかりやすく教えてください。
(いつも質問が唐突だよ・・・)請負の場合、次の二つの課税文書(印紙税が課される文書)に該当する可能性があるよ。一律にいくらと決まっているわけじゃないので判断が必要だ。
通常は、請負契約は2号文書というものに該当する。でも、一見2号文書に見えるのだけど、実は7号文書というケースが税務調査でも指摘されるね。
2号は契約金額によって印紙の金額が変動する。一方で7号は一律4千円。
普通の請負契約は2号ですよね?今回は、これをいくらでやりますよ〜みたいな契約書です。
そうだね。7号は、1回だけじゃない継続的取引の契約書が該当する。よくある基本契約書というのが該当することが多い。7号は次のすべての要件を満たしていると該当する。
第7号文書
↓のすべてが記載されている契約書です。
(1) 営業者間での契約であること
(2) 売買、売買の委託、運送、運送取扱いまたは請負のどれかに当てはまる取引契約であること
(3) 2つ以上の取引を継続するための契約であること
(4) 2つ以上の取引に共通して適用される下記の取引条件のうち、どれか1つ以上の記載がある契約であること
・目的物の種類
・取扱数量
・単価
・対価の支払い方法
・債務不履行の損害賠償の方法
・再販売価格
要は、同じような取引で何回も契約書を結ぶのはかったるいから、取引条件を予め決めておきましょう、というのが7号文書だね。ただし、契約期間が3ヶ月以内&更新の定めがない契約書は7号から除くよ。実務では、そんな短い期間の基本契約書ってあまリ目にしないけどね。
なるほど、通常は4つの要件の全部に当てはまっていたら、7号文書になるってことですね?
・・・残念!一概にそうは言えないのが、難しいところなんだ。両方に当てはまっていても、記載金額(契約金額)が計算できるものは2号文書になる。
例えば、「月額10万円 契約期間1年間」との記載があれば、記載金額は「10万円×12ヶ月=120万円」ということになって、7号ではなく2号に該当することになる。また、契約金額を変更するだけの契約も2号文書になるから印紙税の対象となるよ。以下のように記載金額が決まるので注意しよう。
■変更前と変更後の金額が共に判断できる記載がされているとき
・変更前より増加→増加金額が記載金額となる。
例) 契約金額100万円だったのを110万円に変更する場合は、
増加した10万円が2号文書の記載金額となります。
・変更前より値引→記載金額はマイナスとなるため、ゼロが記載金額
(金額のない2号文書として200円の印紙が必要)
例) 契約金額100万円だったのを80万円に減額する場合は、
増加額は△20万円となり、マイナスはゼロと考えます。
■変更後の金額のみ記載されているとき
→変更後の金額のみで印紙税額を判断。
例)当初の売買金額を90万円に変更するとしか書いてない。→90万円が記載金額となる。
では、「契約期間は2017年12月1日から2018年11月30日の1年間とする。ただし双方異議なき場合は更に1年延長する。」といった契約ではどうなりますか?
1年の延長は確定されたものではないので、更新前の1年間がその文書の契約期間になるんだ。もし月額20万円との記載があれば、20×12=240万円が記載金額。この場合の2号文書の印紙税は1,000円になるよ。
なるほど。7号文書の4つの要件に該当しなくて「記載金額なし」と判定された場合は、2号文書(単発の取引等)になるから記載金額が無い場合には200円になるってことでしょうか?
そのとおり!印紙税について分かってきたみたいだね。 ちなみに印紙税は、貼り忘れが税務調査で発覚すると過怠税として2倍に相当する額を加算されて徴収される(つまり元々の3倍の印紙税額を納めなければならない)こともあるので、注意が必要だよ。
そういえば、お客様からどんな契約が「請負」に該当するのか聞かれましたよ〜。 請負は、依頼に対して決まられた結果を出し、結果に対して報酬を支払うもの(成果報酬)ですよね!仕事が完了しないとお金を払わない契約です。
そうだね、逆に請負ではない契約は委任契約と呼ばれ、良い・悪いの結果に関わらず、相手が行った行為に対して報酬を支払う契約(一般に他人を信頼して相談・コンサルティング等を委託する契約)になる。委任契約の場合は印紙は貼らなくてOk。成果物があってもなくてもお金を払うなどは、これに該当する。ただし、具体的な納品物が記載されている場合は請負契約となるよ。
委任と書いてあるから委任契約と判断するわけじゃなく、あくまで契約の実態で判断するわけですね。契約書の名前だけで判断しないように気をつけなきゃ。
ちなみに、間違えて多く貼っちゃった場合は、税務署で還付を受けることも出来るので安心してね。
なるほど〜、この頃、先輩から頼まれた仕事ばかりで仕事をやり過ぎです。還付を受けたいですね♡
・・えーと、もちろん還付(ごちそう)します。なお、税務調査の現場では印紙の貼り忘れがあっても、不納付申出書を提出することで3倍ではなく、1.1倍で済むケースが通常だよ。税務署さんは意外と優しいよ。
先輩も優しくしてくださいね♡。明日の仕事は今日の1.1倍までにしましょう。