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◆暦年贈与の非課税枠は110万円
皆さんご存じのように、贈与税は暦年計算です。1月~12月までの贈与について、贈与を受けた人が翌年3月15日までに申告します。贈与税の計算は、贈与額から基礎控除(110万円)を差し引いた残りの金額に対して課税されるため、年間110万円までなら贈与税はかかりません。申告も不要です。
相続税の計算の際には、直近3年間の贈与を足し戻すのですが、それ以前の贈与については課税されません。この制度を利用して、相続税の負担を抑えるために、毎年少しずつ次世代の子や孫へ財産を移転される方も多いのではないでしょうか。
相続税額を抑えられるうえ、毎年の贈与税申告も納税もないのですから、一見メリットが大きいように思われます。
ところが一方で、贈与額を110万円超にして敢えて申告することを提案する税理士事務所もあります。
課税所得:111万円-110万円=1万円
納税額:1万円×10%=1,000円
少しだけ納税が出るように申告をするのです。なぜでしょうか?もちろんこれには、ちゃんとした理由があります。
どういうことですか?
◆名義預金とは?
名義預金とは、口座の名義人と実際に管理している人が違う預金のことです。親が子へ、祖父母が孫へ将来のために預金してあげていたり、夫の収入の一部を専業主婦である妻の名義の口座に預金していたりするパターン。もちろん生活費や教育費として通常使うための預金であれば、そもそも贈与税は非課税です。
家族名義の口座に預金するのが全てNGというわけではありませんが、注意が必要なのです。税務調査で、本人の収入に見合わないような多額の預貯金を持っていたら、名義預金では?と疑われるケースも。名義預金であれば、別の家族の名義になっているけれど、実態は本人の財産だよね、と認識されてしまいます。
特に話題に上がることが多いのは、親や祖父母から未成年者への贈与があった時。未成年者には意思決定能力がないため、預金の管理は親権者(法定代理人)が行います。贈与契約も同様に、法定代理人がその未成年者の代わりに契約を結ぶことになります。ただし、贈与という行為自体が受けた人にとって不利益になるものではないので、未成年への贈与だと、贈与する人(親・祖父母)単独で契約を結ぶことが出来てしまう点が要注意。そのため、当時未成年者であった子や孫が、相続が発生した時にその預金の存在を知らなかった!なんてこともありうるわけです。
このように「名義預金」であると認識されてしまうと、その預金口座の残高全額が贈与した本人の財産であるとみなされることになります。相続する財産が増えるわけですから、相続税の課税所得は増え、相続税の納税額が増えます。以下をご覧ください。
例)毎年、年末に110万円の贈与を行っていた場合 (単位:万円)
いかがでしょうか。課税財産の価額に770万円もの差が出ることになります。
◆贈与の事実を明確にする方法
贈与があったことを証明するためには、まず「贈与証書」を作成することが大事です。贈与証書とは、贈与に関する契約書のこと。誰に、いつ、いくら贈与するのかを、お互いに納得して契約しているということを書面で残しましょう。更にこれを最寄りの「公証役場」に持参することで、確定日付をもらうことができます。確定日付とは、持参した当日にその書面が存在したという証明のことです。書面を作成するだけでは後日遡って作成することも物理的には可能ですので、確定日付をもらうことで確実性が増します。ただし、確定日付はあくまでも書面の存在を証明するものです。書面の内容が正しいかどうかまでは確認してもらえませんので、注意しましょう。
もう一つ有効なのが、税務署へ申告すること。申告を行うことで、「贈与があった」という事実を証明し、税務署へ履歴を残すことができます。相続税の申告をするときでも、贈与であったことを税務署に先ずは認識してもらえる手法と言えます。確定日付よりも確実に贈与の事実を残すことが出来るでしょう。
◆贈与税のコスパを考える
さて、ここからはもうひとステップ進んだ論点です。できることなら税金や手数料の支出は少ない方がいい。手間だって最小限に抑えたい。これは誰しも考えることでしょう。(皆さんが欲張りなのは、知っています!笑)
下記の3パターンで比較してみましょう。いかがでしょうか?
費用 | 手間 | 信憑性 | |
①年間110万円以内の贈与に抑え、何もしない | 0 | ◎ | × |
②年間110万円以内の贈与に抑え、贈与証書に確定日付を貰う | 700 | 〇 | 〇 |
③年間111万円の贈与とし、贈与税申告&贈与税1千円納税する | 1,000 | 〇 | ◎ |
贈与税の申告については税理士に依頼するのであれば報酬が別途必要にはなりますが、少額の納税に抑えることで信憑性を担保しながらも支出を最小限に抑えられます。また、確定日付の手数料も700円程度です。名義預金となってしまうリスク・その際の相続税額への影響を考えれば、正直安いものだと思います。(ちなみに税理士の贈与税申告報酬は1~3万円程度が相場でしょう。)
一番確実な方法は、②と③全てを行うことです。その他の相続財産(土地建物や株など)が多額になりそうな場合は、生前に現預金の移転をする際に贈与税申告をした方がメリットは大きいでしょう。相続税節税を確実にするため、というGOALを見据えて最適な贈与が行えるように、今一度ご検討されてはいかがでしょうか。
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